「努力すれば報われる」と、私は生徒に言い切れない
同じ1時間の勉強でも結果が違う、「努力できる環境」の格差 現役教師の「言いにくい話」#4
こんにちは。地理おた部です。
「努力すれば、きっと報われる」
教師として、とても言いたくなる言葉です。
うまくいかなくても、もう少し頑張ってほしい。
簡単に諦めてほしくない。
今は結果が出なくても、努力することには意味があると伝えたい。
私自身、努力そのものを否定するつもりはまったくありません。
むしろ、生徒には努力できる人になってほしいと思っています。
それでも私は、
「努力すれば報われる」
とまでは、簡単に言い切れません。
なぜなら、教師という仕事をしていると、どうしても一つの疑問にぶつかるからです。
同じ「1時間勉強した」は、本当に同じ1時間なのだろうか。
静かな自分の部屋で勉強する1時間。
兄弟の世話をしながら勉強する1時間。
わからないところを親に聞ける1時間。
一人で教科書とにらめっこする1時間。
月数万円の塾で、自分の弱点を分析してもらいながら勉強する1時間。
何から手をつければよいのかわからないまま過ぎていく1時間。
時間の長さは、同じです。
でも、その1時間の「質」まで同じとは限りません。
そして、それは本人が努力する前から決まっている部分があります。
日本の15歳には「81点」の差がある
OECDのPISA 2022を見てみます。
日本の15歳を、家庭の経済・社会・文化的背景を示す指標で4つのグループに分けたところ、最も恵まれた上位25%と、最も不利な下位25%では、数学の平均得点に
81点
の差がありました。
社会経済的背景は、日本の数学成績のばらつきの12%と関連していました。OECD
81点。
私は、この数字を見て少し考えてしまいます。
「もっと努力しなさい」
という言葉だけで、この差を説明できるでしょうか。
家庭の所得。
親の学歴や職業。
本や情報に触れる環境。
学校外で受けられる教育。
住んでいる地域。
それらは、15歳の本人が選んだものではありません。
もちろん、
「家庭環境が違うから成績が決まる」
と言いたいわけではありません。
実際、同じPISAでは、社会経済的に不利な下位25%の生徒のうち、12%は数学成績で国内上位25%に入っていました。
OECDはこうした生徒を「academically resilient(学業的にレジリエントな生徒)」と呼んでいます。
環境は運命ではありません。
でも、
環境は無関係でもありません。
この二つを同時に考えることが、今回の記事の出発点です。
では、「努力」の前には何があるのでしょうか
ここから先では、
・家庭環境と学力には、実際どの程度の差があるのか
・「家に本があること」と成績はどう関係しているのか
・塾や英会話など学校外教育は格差にどれほど関係するのか
・お金があっても、そもそも近くに塾がない地域ではどうなるのか
・2026年7月に公表された最新研究が示したこと
・それでも「努力には意味がある」と言える理由
・そして教師は、生徒に努力をどう語ればよいのか
を、研究とデータから考えます。
私が書きたいのは、
「努力なんて無意味だ」
という話ではありません。
むしろ逆です。
努力が報われてほしいからこそ、努力する前に存在している差を無視したくない。
ここからが、今回の「言いにくい話」です。