「愛知で節水」なのに、なぜ長野の雨を見るのか? 地図でたどる120kmの水の旅
愛知県で「節水」というニュースが出たとします。
では、水が足りない理由を調べるために、どこの雨を見ればいいでしょうか。
愛知県の降水量。名古屋の天気。知多半島の雨。
そう考えるのが自然だと思います。
ところが、愛知用水について調べていくと、地図上の視線は愛知県からどんどん離れていきます。
たどり着くのは、長野県です。
愛知県で使う水なのに、なぜ長野県を見るのでしょう。
月曜日の記事では、「雨のニュースをよく見るのに、なぜ水不足になるのか」を考えました。
そこで見えてきたのは、単純な「雨が多い・少ない」だけでは水不足を説明できないということでした。
金曜日は、その話を実際の地図で確かめてみます。
スマートフォンでもパソコンでもかまいません。地図を一枚、開いてみてください。
愛知県の「水不足」を検索すると、長野県のダムが出てくる
まず地図で「牧尾ダム」と検索してみます。
表示される場所を見て、少し意外に感じる人もいるかもしれません。
牧尾ダムがあるのは、愛知県ではありません。
長野県木曽郡の王滝村と木曽町にまたがる場所です。
愛知県によると、かつて知多半島では大きな河川が少なく、生活や農業をため池に頼り、水不足に悩まされていました。
そこで生まれたのが、
「木曽川の水を知多半島へ引こう」
という構想です。
そのために木曽川上流に造られた主要な水源施設の一つが、牧尾ダムでした。
つまり、愛知県の水を考えているはずなのに、地図上では県境を越えて長野県まで戻らなければならない。
ここに、水を地図で考えるおもしろさがあります。
牧尾ダムから愛知県へ直接、水道管が伸びているわけではない
では、牧尾ダムから愛知県まで巨大な水道管が通っているのでしょうか。
そうではありません。
ここから、ぜひ地図を少し縮小して見てください。
牧尾ダムの水は王滝川から木曽川へ流れます。
そして牧尾ダムから木曽川を約120km下った岐阜県八百津町付近に、愛知用水の取水口があります。
そこで木曽川から水を取り入れ、さらに約112kmに及ぶ幹線水路などを通って愛知県側へ水が運ばれていきます。
牧尾ダム。
王滝川。
木曽川。
岐阜県の取水口。
そして愛知県へ。
普段、蛇口から出てくる水だけを見ていると、この距離を意識することはほとんどありません。
でも地図で上流へたどっていくと、愛知県で使われている水が、いくつもの県をまたぐ長い仕組みに支えられていることが見えてきます。
蛇口の向こうには、100kmを超える「水の地理」があります。
8月末のニュースを、もう一度地図の上で見る
2026年8月、愛知用水では渇水への対応が続きました。
8月7日に節水対策が始まり、8月26日には農業用水20%などへ節水対策が強化されました。
ところが、その後は状況が少し変わります。
8月27日時点で36.4%だった牧尾ダムの貯水率は、8月31日には45.7%まで回復しました。
9月1日には節水対策を緩和することが決まり、9月2日から農業用水10%などへ引き下げられます。
数日間の雨で、水源の状況が変化したわけです。
ここで気をつけたいのが、
「愛知で雨が降った」=「愛知用水の水源が十分に潤った」
とは限らないことです。
愛知県の街で雨が降っていても、その雨が長野県の木曽川上流に十分降っているとは限りません。
逆に、自分の暮らす街では晴れていても、遠く離れた上流で雨が降れば、水源の状況が改善することがあります。
水不足を見るときには、
「どのくらい降ったか」だけでなく、「どこに降ったのか」
を見る必要があります。
ここから先は、県境ではなく川の流れで地図を見ると何が変わるのか、牧尾ダム以外の水源はどう関係しているのか、そして自分の家の蛇口まで「水の旅」をたどる方法を見ていきます。
愛知の水不足を、愛知だけ見ても分からない
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- 県境よりも「上流と下流」を見る
- 水は牧尾ダムだけから来ているわけでもない
- 今週末、蛇口から上流へ地図をたどってみる
- 「今日は雨だった」だけでは分からない
- 県境を消してみると、ニュースが変わって見える
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