可愛い表紙に油断した。424ページあるのに、まだ読みたくなる地理の本
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最初に驚いたのは、中身ではなく「重さ」でした
今回紹介したいのは、瀧波一誠さんの『世界の「なぜ?」がまるわかり! 面白すぎる地理の話』です。
最初に表紙を見たとき、正直なところ「気軽に読める地理の雑学本かな」と思いました。イラストもポップで、難しい専門書という雰囲気ではありません。
ところが、手に取ってみてびっくりしました。
424ページ。
なかなかの厚さです。
「これ、最後まで読むの大変じゃない?」
最初はそう思ったのですが、実際に読んでみると、この424ページという厚さの印象が変わってきます。
というのも、この本は最初から最後まで一本の話を追い続ける本ではありません。「なぜ?」という問いが次々に出てきて、それを一つずつ地理から読み解いていく構成だからです。
だから私は、最初から順番に全部読むというより、気になるところを見つけては開く、という読み方をしています。
そして困ったことに、目次を眺めているだけで気になる問いが次々に出てきます。
「フランスパンはなぜ硬い?」も地理になる
この本に出てくるのは、いかにも地理らしい「山脈」「気候」「都市」といった話だけではありません。
「なぜ、ニューヨークは世界一の都市になったのか」
「なぜ、シンガポールは自然災害が少ないのか」
そして、
「なぜ、フランスパンは硬いのか」
フランスパンですよ。
これを目次で見た瞬間、私は読みたくなりました。
普段食べているパンと地理。一見するとまったく別の話に思えます。でも、食べ物も、都市も、産業も、人々の暮らしも、その土地の自然条件や歴史、周辺地域との関係の上にあります。
地理の面白さって、ここだと思うんです。
「フランスはここ」「シンガポールはここ」と場所を覚えて終わるのではなく、
「なんで、ここではこうなったんだろう?」
と考え始める。
本書は、この「なんで?」をひたすら投げてきます。
地理教師の私が特に面白かったのは「スイス」
私が特に面白かったのが、スイスについて扱ったところです。
「スイスは永世中立国」
これは、社会科を勉強した人なら聞いたことがあると思います。
ところが、
「では、なぜスイスはその道を歩んだの?」
と聞かれると、急に難しくなります。
こういう知識、学校にはたくさんあります。
名前は知っている。テストなら答えられる。でも、「なぜ?」までは考えたことがない。
本書では、スイスを取り巻く地形や周辺諸国との関係などをたどりながら、一つの国がどんな条件の中で歩んできたのかを見ていきます。
私は地理の授業をしているので、ここを読みながら、
「これ、そのまま授業の導入に使えるな」
と思いました。
「スイスは永世中立国です。覚えましょう」から始めるのと、
「そもそも、なぜ中立なの?」
から始めるのでは、生徒の反応はかなり違います。
答えを覚える前に、問いがある。
学校の先生にこの本をすすめたい理由は、そこです。
授業の「あと5分」にも強い
先生をしていると、授業中に突然、
「先生、なんで○○なんですか?」
と聞かれることがあります。
これが結構怖いんです。
教科書に載っている知識なら答えられても、生徒の「なんで?」は教科書の外から突然飛んできます。
そんなときに使える話の引き出しを増やしてくれる本でもあります。
アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、オセアニア。そして最後には、地域を超えて考える章まであります。2026年3月に刊行された本で、著者の瀧波一誠さん自身も長く地理教育に携わってきた方です。
授業で使うためだけに読む必要はありません。
ぱらぱらめくって、
「これ面白い」
と思ったものを一つ覚えておく。
それだけでも、次の授業の雑談がちょっと変わります。
もちろん「424ページ」は人を選びます
ここは正直に書いておきます。
薄くて、写真やイラストを眺めて10分で読み終わるタイプの本ではありません。
424ページあります。
「とにかく短い本がいい」という人には、少し重たく感じると思います。また、大学受験用の参考書として用語を効率よく暗記したい、という目的とも少し違います。
でも、「世界のいろいろなことを、理由まで知りたい」という人には、この厚さがむしろうれしくなってきます。
私も全部を一気に読むのではなく、気になった項目から読んでいます。
本棚に置いておいて、ニュースを見たとき、授業を考えているとき、旅行先を調べているときに開く。
そういう付き合い方が似合う本だと思います。
「地理は暗記だった」という人にこそ読んでほしい
地理というと、
国名。
首都。
山脈。
気候区分。
そういうものを覚える科目だと思っている人は、まだ多いと思います。
もちろん知識は必要です。
でも、その知識の先にある「なぜ?」まで行くと、地理は急に面白くなります。
なぜ、この街が大きくなったのか。
なぜ、ここでこの産業が発達したのか。
なぜ、この食べ物が生まれたのか。
同じ世界を見ているのに、気になることが増えていく。
424ページあるのに、読み終わることより「次はどこを読もう」と思ってしまうのは、たぶんそのためです。
地理好きの人はもちろんですが、「学生時代、地理は暗記ばかりで苦手だった」という大人にも読んでみてほしい一冊です。
そして学校の先生なら、職員室の机か学級文庫に一冊。
生徒に見つかったら、たぶんこう聞かれます。
「先生、この『フランスパンはなぜ硬い?』って何?」
そこから、もう授業が始まります。
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